サークル オブ ライフ

2013年1月16日(水)

活気に満ちたサンゴ礁の広がる所でダイビングをしていると、‘なんて素晴らしい世界なのだろう’と安易に考えがちですが、それは表面上にしか過ぎません。サンゴ礁での生活はそんなに簡単なものではなく、様々なルールが存在する厳しい世界なのです。


写真提供:ワカトビゲスト Steve Miller

“食うか、食われるか”が一番重要なルールなので、種のために繁栄し、次世代のために正常な遺伝子を残すには充分長生きする必要があるのです。


写真提供:ワカトビゲスト Larry Abbott

そうはいっても、長生きするのはそう簡単なことではありません。


写真提供:ワカトビゲスト Rob Darmanin

枝サンゴの間を泳いでいるハナグロチョウチョウウオのペアのように、なんで水中に住む生物たちはこんなに綺麗なんだろうと不思議に思ったことはありませんか? しかし、水中の世界では幼魚から成魚になるまでに、たくさんの危険な道を通らなくてはなりません。


写真提供:ワカトビゲスト Walt Stearns

ワカトビのように多種多様で健康なサンゴ礁が広がるリーフでは、多くの種が複数の適した場所を持っているため、繁殖するための相手も見つけやすいのです。

水中の世界では、ユニークな模様や色は種を区別するのにとても重要です。特に異性にアプローチする時は、見せ方が全てです。色や模様だけではなく、時には異性の注意を引くために変わった姿勢や動きをしなければいけない時もあるようです。



写真提供:ワカトビゲスト Frank Owens

この写真のカエルアンコウのように、いくつかの種のカエルアンコウは目を惹くような色をしています。色は仲間を見つけるための重要な要素になるとも考えられています。

ほとんどのカエルアンコウは、生き残るために周囲に擬態したりしてできるだけ目立たないようにしています。そして異性にアプローチする時が来ると、独特な香りや‘フェロモン’を水の中に放出するのです。


写真提供:ワカトビゲスト Erik Schlogl

ほとんどの魚にとって、子孫を残すことが優先順位の一番上にきます。そんな魚たちにとっては、繁殖していくことが最も重要なため、異性の気を引く時は真剣な勝負となります。その競争に対抗するために、いくつかの種は、機能的なメスまたはオスとして生活を開始し、後で他の性に変えたり、性的に成熟するのを遅らせたりする種もあるのです!

例えば、一匹の支配的なオスと複数のメスで構成されるスミレナガハナダイのオスはハーレム状態です。メスは、明るいオレンジ色をしているのに対し、オスには体に紫色で正方形の斑点があります。メインの支配的なオスが死んでしまうか、仲間から外された場合は、グループの指揮を引き継ぐために最高ランクのメスがすぐに性別、色、サイズを変えます!この支配的なオスは、自分のグループに属する幼魚も保護するので、ボスを持つことは幼魚たちにとってもメリットがあります。


写真提供:ワカトビゲスト Mark Vanderlinden

海洋生物のメスの産卵生産能力は、そのメスのサイズと年齢に関連していると言います。大きくて年をとったメスは、大きくて質の良い卵を生む能力があります。大きくて良い卵は、大きくて強い幼魚となるため生存率も高くなります。

そのためオスたちは本能的に、より大きく成熟したメスに惹かれるのでしょう。そう、強い者が生き残る厳しい世界なのです!


写真提供:ワカトビゲスト Carlos Villoch

ほとんどの魚たちは様々な方法で産卵し、育児の方法も様々です。

遠洋で産卵する魚の大半は(アジ、チョウチョウウオ、ベラ、ゴンベ、キンチャクダイなどの仲間)オスとメスが一緒に上昇していき、水中で卵と精子を放出します。ハタやタイのような種は、月が正確な位相にきた時に、産卵のために特定の場所に大きな群れをなします。ブダイの仲間は、夕暮れ近くになると産卵のために集まり捕食を避けるために、同じ種の他の魚たちと同時に大量の卵と精子を放出します。

大きな群れを作って何万もの卵を放出することは、卵から孵化する幼魚の生存率を上げることにもつながります。何匹かのラッキーなこのギンガメアジもまた成長し、同じサイクルを繰り返していくのです


写真提供:ワカトビゲスト Doug Richardson

いつ、どこで産卵を好むかは生息する環境の状態により異なります。

例えばハナミノカサゴは、卵をより分散するために流れが強い時を狙います。そうすることにより、卵の分布範囲が広がり子孫の繁栄につながると考えられているようです。


写真提供:ワカトビゲスト Steve Rosenberg

ハナミノカサゴとは対照的で、スズメダイやモンガラカワハギ、クマノミ、ハゼ、ギンポのように小さな種は海底に卵を産みつけます。(一部は事前に巣を作る種もいます)そして、卵が孵化するまでの数日間は熱心に面倒をみながら卵を保護します。卵が孵化すると稚魚たちは潮の流れにのり、自らの人生を歩んでいくのです。

サンゴ礁に住む魚たちで巣を作る種は稀ですが、そんな魚たちを観察してみると藻類や小石の破片などをどかしてキレイにしたり、一生懸命に巣を守ったりととても興味深い行動を見ることができます。そして彼らもまた卵が孵化するまで、巣穴を守り卵の面倒をちゃんと見るのです!


写真提供:ワカトビスタッフ Guy Chaumette, Liquid Motion Film, www.liquidmotionfilm.com

オスのクマノミや数種類のスズメダイは、ホストであるイソギンチャクの近くに巣を作ります。メスは卵を産むとすぐその場から去り、オスが卵を受精させるためにやって来ます。そして、オスがその卵の面倒を見るので“ミスター・ママ”となり、自分のヒレをなびかせ新しい水と酸素を送り込んだりして、一日中一生懸命面倒をみます。また、巣の汚染を避けるために死んでしまった卵の除去をして、卵があるエリアをキレイに保つのもオスの仕事です。


写真提供:ワカトビゲスト Rob Darmanin

ピグミーシーホースを含むタツノオトシゴの仲間は、ペアになるとオスが主導権を握るようです。というのも、オスのピグミーシーホースが妊娠し出産するからです!

オスが妊娠することにより、交尾の行動も逆転することになります→メスが未受精卵をオスのお腹の育児嚢に移すと卵の外殻が壊れ、卵の周りに細胞が集まってきます。受精後、ピグミーシーホースの赤ちゃんの準備が整うまで、オスは環境を整えます。受精してから約11日後、一度の出産でおよそ6匹から15匹の赤ちゃんを産みます!


写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith, www.oceanrealmimages.com

卵を守りやっと孵化したとしても、稚魚たちが立派な成魚になるまでには相当な時間を要します。

小さな稚魚たちが海流に流されながら成長していく課程では、他の海洋動物のいいカモになってしまう確率が非常に高く、稚魚の死亡率の一番の原因とされています。そのため、補食されるのを避けながら成長していける場所を見つけることがとても重要となります。


写真提供:ワカトビゲスト Steven Reinemund & Cristina Mendoza

生息地の他に、浅瀬にあるラグーン内は栄養素が豊富なため幼魚が成長していくのにとても適した場所でもあります。十分な栄養を取ることは彼らの成長に直接影響を与えるため、生存していくためには必要不可欠です。また、小さな魚が早く大きくなることにより、捕食者から逃れられるチャンスも高くなるのです!

そのため私たち人間は、幼魚たちが捕食者から隠れられ栄養素が豊富なマングローフや海草・海藻が密集するエリア、浅瀬にあるラグーンなどの環境を保護していくことがとても重要視しされており、絶滅危惧種に指定されている生物の保護にもつながると考えられています。


写真提供:ワカトビゲスト Adam Middlemass

幼魚たちがサンゴ礁に落ち着くと、一部の幼魚は嗅覚と聴覚を使い、同じ種の個体が住んでいる場所を見つけ出します。仲間を見つけることにより、その場所は環境がよく、その種に合った食物が得られることを証明していることにもなります。それと同時に、同じ場所で生活していくにあたり競争関係になることも意味しています。


写真提供:ワカトビゲスト Richard Smith, www.oceanrealmimages.com

同じ種なのにも関わらず幼魚と成魚の色や模様の違いには、いつも驚かされます!

ほとんどの魚が最終的な姿になるまで、成長していく過程で色や模様を変えていきます。ダイバーに大人気のこの可愛いミナミハコフグの幼魚が、成魚になるとどんな感じになるのかご存知ですか?


写真提供:ワカトビゲスト Rob Darmanin

いくつかの種の幼魚は外敵から身を隠すよりも、味方の振りをした方が良いことを知っています!

実際に彼らは明るい青色をまとい、捕食者に提供できるサービスがあることをアピールしています。一般的に“クリーナーブルー”と呼ばれている青い波模様は、クリーニングフィッシュであることを示していて、魚たちはこの色をきちんと識別することができるそうです。クリーニングサービスを提供することで、食べる方と食べられる方の関係をなくすこともできるのです。ホンソメワケベラが完全に成長し、被害を受けにくくなる頃には、幼魚の時にあったクリーナーブルーの青色は消えてしまうのです。

もちろんどんなルールにも例外があるのです!


写真提供:ワカトビゲスト Dieter Freundlieb

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