世界遺産 トゥバタハ・クルーズ航海日誌 4月30日~5月5日2006年 水中写真家 鍵井靖章

2006年5月5日(金)

乗船1日目(4月30日)
国内線でプエルトプリンセサに到着後、今回乗船するアポ・エクスプロ
ーラーに乗り込む。ランチを海の見えるレストランで食べ、その後、み
んなで地元のス-パーへ向かう。約30分間、自由に買い物。その後、ア
ポ・エクスプローラーに戻ってくる。お部屋で昼寝をする人、サンデッ
キで本の読む人、スピードボートでスノケーリングトリップに向かう人
、それぞれの休暇の始まりを楽しむ。夕方6時にボートブリーフィング
が始まる。フライドチキンやエビ、野菜炒めなどの夕食後、本船はトゥ
バタハリーフに向かって出発した。

乗船2日目(5月1日)
朝6時のモーニングコールで起きる。本船は一晩中、航海していた。プ
エルトプリンセサから約10時間の道のり。朝7時過ぎに1本目のダイ
ビングを開始する。16名のゲストが2つのグループに分かれ、2隻の
スピードボートに乗り込んだ。1隻のスピードボートはエンジンの調子
が悪く、出遅れる。今回仕切っている現地人スタッフのレイが「時間は
守りましょう!」とブリーフィングで伝えたが、ボート側からこんな状
態。のっけからフィリピンスタイルだ。こんなアクシデントも含めたダ
イブクルーズの旅は始まった。チェックダイブを兼ねて潜り込んだダイ
ブポイントは「Shark Airport:シャーク エアポート」
の隣のポイント。砂地のポイントであると聞いたが、サンゴのドロップ
だった。それでもエントリーと同時に、ギンガメアジの大群に迎えられ
、その後も、ネムリブカ、タイマイ、ナンヨウツバメウオの群れと出会
った。良い滑り出しだ。
2本目のダイビングは10時半から。今度は本当に「Shark Ai
rport:シャーク エアポート」にエントリーする。垂直に落ち込
むドロップオフが続く。トップリーフには美しいサンゴ礁が続き、デバ
ススメダイやキンギョハナダイが無数に群れる。ブルーウーォターでは
カスミアジの編隊や数匹のロウニンアジが泳ぎ、クマザサハナムロの群
れを襲う機会を伺っている。別のグループは少し深場でギンガメアジの
群れを見ていた。最後は砂地のエリアに着き、数匹のネムリブカを目撃
した。

ランチを終え、潮の流れが早いということで、環礁の南にあるマラヤン
レックにポイントを変更する予定だが、ゲストルームのヘアコンが1台
故障したため、出発が遅れた。
3本目のポイントは 「Seafan Alley・シーファンアレイ
 」        
マラヤンレックには行かず、サウスツゥバタハの北部でそのまま潜る。
深度を下げるとウミウチワがたくさん連立している。その周囲にはソフ
トコーラルやヤギの仲間が群生している。トップリーフのサンゴの美し
さとはまた違った景観が広がる。これもひとつのトゥバタハの魅力。イ
ソマグロやロウニンアジの編隊が深場を泳ぎ去る。他のグループは毎ダ
イブ、カメを見ているとのこと。僕のチームは見ていない・・・少し残
念。
4本目のポイントは「Shark Airport:シャーク エアポ
ート」の南で潜る。タイマイやバラクーダ、ギンガメジの群れ、ロウニ
ンアジなどを見る。グループの後方で潜っていたが、ネムリブカがずっ
と私の後を付いてきているようで、奇妙だった。また、個人的にはデジ
タルカメラのマクロレンズを持ち込み、小さな生き物を探した。珍しい
魚種を見つけることは出来なかったが、ウミシダやソフトコーラルなど
私の好みの被写体は溢れていた。

乗船3日目(5月2日)
朝6時のウェイクアップコールがあり、7時にはダイブデッキに向かう

1本目のダイビングは(Malayan Wreak・マラヤンレック
)。沈船のポイントで水面から座礁した船の一部が見える。沈船のポイ
ントということで、大きな船を想像していた。また、ガイドが「10分
で沈船から離れます」と言っていたので、深いのかな?と思っていたら
、水深6mほどの海底に鎮座し、朽ち果てた船体はとても小さかった。
それでも見所は、沈船を漁礁した魚の群れ。アヤコショウダイとチョウ
チョウコショウダイ、イスズミが群れ、ナンヨウツバメウオの姿もちら
ほら。魚まみれになった後は、ドロップオフに向かった。見られた生物
は川のように泳ぐギンガメアジの群れ、ネムリブカ、タイマイ、バラク
ーダの群れなど。エキジットの時、サンゴの隙間にいる小魚を狙い、微
動だにしないナポレオンや求愛ディスプレイで婚姻色になったカンムリ
ブダイの集団などを眺めていた。
2本目は(Malayan Wreak・マラヤンレック)から(Wa
ll Street・ウォールストリート)までダイビングする予定が
、潮の流れが反対で、方向転換。見られた生物はネムリブカやタイマイ
。潮の流れに翻弄され、30分過ぎにはトップリーフに上がる。砂地に
パッチリーフが点在している。ガイドはあまりマクロの生物を見せる技
術がないようで、おのおのバディ単位で生物を探しながら楽しむ。サン
ゴの隙間に住むダルマハゼ系やハゼの仲間、ガーデンイールなど。前回
のそうだったが、ガイドのフィッシュウォチングに対する意識が違うの
で、このように大物を狙う以外のダイビングの場合、自分たちで海やダ
イビングを楽しめる人がトゥバタハリーフにはお勧め。
ランチの移動時間、本船からイルカの影が水面に見えた。
3本目、4本目のポイントは(AmosRock・アモスロック)。本
船をより南に移動させ、スピードボートでエントリーする。3本目は潮
に乗りながら上手く進んでいったが(あまり記憶に残る生物との遭遇は
ならず)、4本目はまた、潮の流れに翻弄された。というのも、潮の流
れる方角が一定でなく、最初は潮の流れに乗って進み始めるが、途中か
ら向かい潮になり、引き返すことになる。これは潮の読むガイドの能力
に関わっているのかもしれない。カスミアジの大きな群れがドロップオ
フ沿いにやってくるが、その他、大物はバラクーダの単体のみ。大物の
気配がなさそうならば、ドロップオフ沿いでマクロの生物を楽しむが良
い。やはり、ここの魚たちはダイバーが珍しいのか?近くまでやって来
てくる。目が合うとやはり逃げるが、また少しすると同じ行動を繰り返
す。バラフエダイがそのような行動をしていたので、特に印象に残った
。2日目を終えて、ジンベイザメやマンタはまだ出現せず。明日は会え
るのだろうか?

乗船4日目(5月4日)
南トゥバタハリーフに到着。1本目のダイビングは(BlackRoc
k・ブラックロック)。エントリーポイントに到着すると、マンタが水
面を泳いでいた。すぐにエントリー。泳ぎ去るマンタを追いかける形と
なったが、念願の大物の出現に心躍る。水面下にマンタが映り、まるで
2匹でランデブーを楽しんでいるよう。ヒレが水面の切り細波が残る。
その後、ガイドはブルーウォーターの方に出て、ハンマーヘッドシャー
クを探すが、願い叶わず。
リーフの上でバラクーダの群れと遭遇した。また驚いたのは、十数匹の
メジロザメの子供の群れが集団で泳いでいた。近くに行くことを許して
くれなかったが、それはかわいい光景だった。2本目のダイビングまで
の間、マンタは本船の周囲に時折、現れた。
 と、この原稿を書いていたら、外がとても騒がしいので、デッキに出
ると、もうすでにマンタとスノーケリングを楽しんでいるゲストがいた
。慌てて入水したが、マンタはもうすでに遠くにいた。すぐに小型ボー
トに乗り込んでみんなでマンタスイムに向かった。青い水の向こうから
現れるマンタは、口を大きく開けて捕食中だった。サイズは小さく、小
回りを効かせて身を翻す。横で一緒に泳いだり、進行方向に先回りして
待ったり、みんなで十分マンタスイムを楽しんだ。ただ、マンタたちが
捕食しているであろうプランクトンであるシーライスが多く、水着だけ
で泳いでいると身体中刺されてしまうので、Tシャッツやラシュガード
を着用することをお勧めする。それにして、マンタの出現で船上は大盛
り上がりだ。
 2本目はガイドの判断でブラックロックのコーナーを挟んだ逆のリー
フを流す。前半はドロップオフの壁沿いを行き、見られた生物はタイマ
イ、バラクーダの単体、クマザサハナムロの群れ、メジロザメの子供の
集団といったラインナップ。エキジットの時に1枚のマンタで出会う。
私の前で白い腹を見せてはまるで深海に誘うように胸鰭を動かす。2度
水中で回転して消えていった。ボートが到着すると、その下にウメイロ
モドキの群れに囲まれた。

ランチの後、本船をまた南に移動させ、ライトハウスという白い灯台の
近くに係留した。3本目に潜ったポイントは、(Staghon Po
int・スタッグホーン ポイント)。ギンガメアジ、バラクーダの群
れも見た。マンタの見た。ハンマーヘッドシャークも見たいけど、やは
りジンベイザメが見たい。みんな同じ気持ちだった。ガイドもポイント
の説明をするとき、ジンベイザメの話を出す。期待してエントリーする
。昨日、今日と見ている限り、午後になると透明度が落ちる。ゲストの
ひとりが「海のピキピキ感がなくなる」と言った。ドロップオフ沿いを
、みんなで移動する。少し深度を浅めにとりながら、ブルーウォーター
も気にしつつ。結果はバツだった。会いたいと思って会える生物でない
。そう分かっていても期待してしまう。先週は会えたそうだ。大きなマ
ンタに出会った。でもゲストの反応はいまいち。午前中スノーケリング
も含めて全てダイビングでマンタを見ている。ちょっと贅沢な話だ。今
、4本目のダイビングに行くまでの、おやつタイム。いつも用意される
スポンジケーキが美味しく、少し疲れた身体が喜んでいる。
 4本目のポイントは(Delsan Wreck・デルサンレック)
。目的はやはりジンベイザメ。エントリー後、早い潮の流れに身を任す
。撮影していると、グループに置いてけぼりをくらい、私はリーフの上
に留まって撮影を続ける。カスミアジの大きな群れを見つけ、近づくと
、まるで獲物を狙うように私を取り囲んだ。カスミアジが集団になると
、時折、このような感覚を受ける。トゥバタハで初めてアオウミガメを
見た。身体が大きく、のっそりと泳ぐ感じ。ダイビングの後半、イルカ
の声がとても近くに聞こえていたが、姿は見えず。潮の流れに乗り続け
て私のチームは結局、リーフから離れて戻ることが出来ず、他のクルー
ズ船のダイビングボートにピックアップされていた。

乗船5日目(5月5日)
今日はダイビングの最終日。6時半にスピードボートに乗り込み、向か
った先は(Delsan Wreck・デルサンレック)。ガイドがこ
こはカメがとても多いと話していた。
朝日の柔らかな日差しが差し込むなか、泳いでいくと、本当にたくさん
のカメが現れた。水面から潜降するカメ、リーフからブルーウォーター
に離陸するカメ。まるでミサイルのようにあちらこちらから現れた。ド
ロップオフにはムレハタタテダイの群れやアヤコショウダイの群れが見
られる。カスミアジがクマザサハナムロを追いかける様子はもうお馴染
みなった。みんなは少し深度を下げ、ハンマーヘッドなども探したが、
見つけることができず。ジンベイザメとのご対面も叶わなかった。ダイ
ビングを終え、本船に帰る途中、イルカの大きな群れを見つける。まず
,船先で泳ぎ始めた。みんなでスノーケリングを付け入水した。7頭く
らいの群れが海底に消えさる様子を見た。なかなかうまく泳ぐことはで
きなかったが、水中でイルカを見ることができ、嬉しい一日の始まりと
なった。
 朝食の後、本船は移動し、北トゥバタハリーフの南に位置するレンジ
ャーステーション付近で係留した。2本目に潜ったポイントは(Ran
gers station・レンジャーステーション)。サンゴのリー
フの合間に砂地が広がり、癒し系の雰囲気がある。ゆっくりした潮の流
れに身を任せ、豊かなサンゴ礁の上を漂っていく。水面から飛び込む太
陽の光も暖かく、「サンゴ浴」を楽しむ。見られた生物はカクレクマノ
ミやタイマイなど。今回のクルーズで潜った他のポイントとの違いはそ
れほどないが、リラックスしてだらだらできるポイントだった。
3本目。クルーズ最後のダイビングも(Rangers statio
n・レンジャーステーション)。2本目に潜ったコースの延長で潜る。
たくさん潜った私はエントリーしなかったが、明るい砂地が広がる癒し
系のポイントでみんな楽しめたと帰ってきた。最大水深は10mで楽し
めたと最後のダイブを締めくくっていた。

CATEGORY

MONTHLY ARCHIVE

ページ先頭へ